
第68回目は、マルスダレガイ科のハマグリ(蛤)です!
ハマグリは、北海道南部から九州の潮間帯〜水深20mの内湾域砂泥底に分布する、中-大型の二枚貝です。
殻の色彩や模様は個体差に富み、お気に入りの個体を探す時間が非常に楽しい貝の一つです。殻表は黄色味を帯びた透明で薄手の殻皮で覆われ、これがニス塗りのような強い光沢を放ちます。厚手で堅牢な殻は陶器のような質感で、殻縁が丸く面取りされたデザインは非常によく手に馴染みます。この腹縁ではその重厚さが特に際立ち圧巻の存在感を放ち、ごくありふれた二枚貝の形状をした本種を“特別な存在”へと昇華させます。そしてご存知の通りの重量感も相まって、ひとたび手に取り眺めれば、胸の高鳴りを覚えざるを得ないのです。お吸い物や焼き物等で目にする何気ない存在でしかなかった本種の貝殻かもしれませんが、何の変哲もない日常から幸せを見出す観察眼こそが人生を豊かにするのでしょう。このコラムに触発された方は、ぜひスーパーの鮮魚コーナーに足を運んでみてはいかがでしょうか。
日本人なら誰もが知っている非常に馴染みの深い貝と言っても過言ではない本種ですが、実は絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)に分類されています。個体数減少の主な原因として、乱獲と生息環境の減少が指摘されています。写真の個体は関東某所にて潮干狩りで採捕されたものです。こんな立派なハマグリが暮らす健全な海洋環境が、いつまでも続いていくことを願うばかりです。

2025.7.31
安田風眞