No. 70 オウムガイ科のオウムガイ(鸚鵡貝)

 

第70回目は、オウムガイ科のオウムガイ(鸚鵡貝)です!

オウムガイは、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、ニューカレドニア周辺などの熱帯西太平洋域の水深100〜600mの深海に生息する「貝」です。深海の生物ではありますが、稀に、ラッキーなダイバーが自然環境下で出会うこともあるんだとか。

「生きている化石」として知名度の高い本種の殻は150〜200mm程と大ぶりになり、殻表には白を基調に鮮やかな火炎模様が並びます。この殻表には滑らかながらも程よく成長線が波打ち、ゆえにややマットな質感を帯びた強めの光沢を纏います。本種のトレードマークとも言える火炎模様は殻の成長とともに消え去り、やがて白色の部位が圧倒的な存在感を帯びるようになります。ひとたび大型個体を手に取れば、この”白の迫力”こそが本種最大の魅力であることを悟り驚嘆することでしょう。そしてこの白壁と対を成す黒塗り部位こそが本種の和名の由来であり、これを鳥のオウムのクチバシになぞらえこの名が与えられたのです。しかしこのクチバシ、実は殻の上に薄らと塗られた膜のような脆弱な構造をしており、比較的簡単に剥がれてしまいます。ゆえにこの箇所の見た目が悪くなりがちで、観賞用の商品では予め研磨・除去されることが多く、しかしそれはそれでまた別の美しさとなり所有欲を満たしてくれることでしょう。

本種の殻は内部にガスが溜まる構造になっており、死骸は海流に漂い世界中を旅することも。そんな個体が、沖縄県をはじめ日本の沿岸に漂着することが時折あります。学生時代に、八重山諸島の砂浜にまだ見ぬオウムガイの幻影を追った日々が実に懐かしいものです。

はじめに「貝」と書きましたが、実は本種はイカやタコと同じく頭足類に分類されるため、厳密には貝ではないのです。しかし貝のおはなしといたしましては、分類学の壁を越え、この生物の持つ類稀なる美しい殻を紹介させていただいた次第です。文字数の関係で書ききれなかった本種の魅力は、そのうち第二弾として再登場する際に語りたいと思います。

2025.9.30

安田 風眞