No. 76 ミノムシガイ科のオオミノムシ(大蓑虫)

 

第76回目は、ミノムシガイ科のオオミノムシ(大蓑虫)です!

オオミノムシは、紀伊半島以南、熱帯インド-太平洋の潮間帯〜水深20mの砂底に生息する殻長50mmほどの巻貝です。

殻表は比較的強めの光沢を帯び、スラリと伸びる端正なシルエット。これだけでも十分に”美貝”の条件を満たしてしまうのに、本種はこれだけでは終わりません。その美貌は一目瞭然でしょう。肩が立ち、格段が際立つ螺塔はゴシック建築の如き緻密な構造を取ります。漆黒に染まる殻頂はまさに小尖塔そのもので、この不可思議な偶然の一致にしばし目を奪われてしまいます。そしてようやく体層へと目を移せば、規則正しく殻表に波打つ縦張肋は緩やかなカーブを描き、これを帯状の模様が横断します。腹面では褐色混じりの鶯色だったこの帯は、背中では濃褐色と淡褐色が混ざり合います。このグラデーションはまるで針葉樹林に沈む夕陽のようで、遙か南の島の貝に馴染み深い北海道の景色を見るとは、何やら嬉しい驚きが隠せません。ミノムシガイの仲間は蓋を持たず、標本を手に取ると若干の物足りなさを感じてしまいますが、そんなことなど忘れてしまうほどに圧倒的な魅力で溢れた貝です。

本州では桜が咲き乱れる今日この頃、こちらではようやく雪が溶け、フクジュソウの蕾はいよいよ青空を仰がんと膨らみ始めました。長い長い冬を駆け抜け、やっと聞こえてきた春の足音に耳を傾けながら、皆様にとって良い新年度が訪れることを願います。

2026.3.30

安田 風眞


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