
第78回目は、ニシキウズガイ科のダンベイキサゴ(団平細螺)です!
ダンベイキサゴは、男鹿半島・鹿島灘から九州南部の、水深5〜30mの砂底に生息する巻貝です。
写真からも一目瞭然ですが、殻の色彩には個体差が激しく、無地で地味なものから帯状に控えめな模様が入るもの、放射状の模様や紅色の化粧をするものまで現れる始末。同種間でこんなにも個性が輝く貝には、心惹かれない訳がありません。殻は比較的薄手でありながら殻軸周辺の密度は高く、程よい重量感を誇ります。殻表はややマットながらも艶やかで強い光沢を帯び、手のひらで転がせばキラリと太陽を反射します。殻を返せばさらに滑らかで光沢が強い殻底が現れ、ここに扁平して開く殻口には真珠光沢の輝きが顔を覗かせます。殻幅は30〜40mm程度とキサゴの仲間では最大になり圧倒的な存在感を放つ様は、まさにキサゴの王といったところでしょうか。ちなみに「だんべい」とは江戸〜昭和時代にかけて活躍した船底が平たい荷を運ぶ頑丈な川船のことだそうで、命名者は本種の強く扁平した殻の形状や堂々たる出立にこの船を見たのかもしれません。
本種の水産流通名は「ながらみ」で、房総半島〜紀伊半島にかけての海域での水揚げが多く、これらの地域では古くから食用として、そしてその美しさ・入手のしやすさから子供のおもちゃ(おはじき)としても愛されてきた貝でもあります。図鑑を見ると、私の故郷・秋田にも本種は生息しているはずなのですが、海で拾えるのは小型のイボキサゴばかり・・・。これまで一度も出会うことなく、今日に至ります。こんな素晴らしい貝が日常に溢れた地域の暮らしは、少し、いや大変に羨ましい限りです。
2026.5.28
安田
風眞