
第79回目は、タカラガイ科のコジカダカラ(仔鹿宝)です!
コジカダカラは、米国はカリフォルニア〜南米ペルーの東太平洋およびガラパゴス諸島近海に分布する殻長60〜70mmほどの中-大型のタカラガイです(特大個体では100mmを超えるんだとか)。それなりの殻長に達するのにも関わらず本種が仔鹿と呼ばれるのは、外観は本種にそっくりながらも本科最大を誇る絶対王者・シカダカラが君臨するからです。シカダカラは最大で190mmにも達する怪物で、いつの日か標本箱に収めたい憧れの貝の一つです。
さて、今回の主役に話を戻しましょう。本種の褐色の殻表に所狭しと”鹿の子模様”が散りばめられる様は非常に可愛らしく、細く長いシルエットまで相まってまさにシカそのもの!と言っても過言ではないデザインは大変に目を惹きます。さらにこの殻表は数本の褐色横帯で飾りつけられることで、単調になりかねないパターンに見事なアクセントを与えます。一方で腹面は背面のキュートな雰囲気から一変し、淡褐色と薄紫色が混じり合い、ここに真っ黒な歯がびっしりと並び得体の知れない毒々しさを醸し出します。とはいえ、殻口下端が大きく開くのはシカダカラと共通した特徴的なデザインで、その堂々たる出立ちは実に雄々しくカッコいいと思いませんか?可愛らしさと禍々しさの二面性を持つ本種は、うまく言語化できない魔性の魅力を持つタカラガイなのです。
ちょうど今、北海道ではこの春に生まれたばかりの仔鹿が母親の足元をチョロチョロと走り回る季節です。その長閑な光景に感化され、今回は本種を選んでみました。ちなみに仔鹿に特有と思われがちな”鹿の子模様”ですが、実は成獣も夏毛ではみんなこの模様になります(写真は近所の牧草地で撮影)。シカつながりで、明日の話題に使える?豆知識でした。

2026.6.29
安田
風眞