
第80回目は、ガクフボラ科のミヒカリコオロギボラ(魅光蟋蟀法螺)です!
ミヒカリコオロギボラは、フィリピン以南の熱帯太平洋に分布する殻長20~25cmに達する大型の巻貝です!
本種の殻は極めて重厚で、殻表は梨地ながら鈍い光沢を帯びます。肩上には大きな棘状の突起が発達し、王冠のように並ぶ様はその重量も相まってまさに圧巻の一言に尽きます。淡褐色の殻表には針葉樹林を思わせる濃褐色の幾何学模様が描かれ、大味なシルエットながらも美しい装飾を待つそのギャップに胸が高鳴ります。また、ガクフボラの仲間の多くに共通する特徴でもある丸みを帯びた大きな胎殻が殻頂に鎮座する様は、荒々しい外観を持つ本種の貴重なチャーミングポイントとして目を惹かれることでしょう。殻口は大きく開き、体層には非常に面積の広い艶やかな滑層が発達します。そして殻軸は、滑らかながらも存在感のある大きな3本の軸襞で飾り付けられますが、この軸襞にはまるで金属加工品の溶接痕のような圧倒的存在感を放つ縫帯が連なります。縫帯は水管溝の縁が幾重にも折り重なることで形成され、まさしく貝殻の成長の歴史を体現し、本種の重厚な印象に拍車をかけるのです。ちなみに本種は蓋を持たないタイプの巻貝ですが、しかしそのインパクトゆえに物足りなさなど微塵も感じさせないパワーを持った貝でもあるように感じます。
なぜだか無性に、こういう大型の貝を愛でたい夜があります。小さな貝にしか宿らない緻密な造形美と、大きな貝からしか得られない特有の満足感。相反する魔性の誘惑は今宵も貝コレクターたちを狂わせ、終わりなき欲望の果てへの旅は続くのです・・・。

2026.7.30
安田
風眞