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No. 44 スガイ(酢貝)


第44回目は、サザエ科のスガイ(酢貝)です!
本種は北海道南部〜九州南部の潮間帯岩礁に分布する、殻長25mmほどの小型の巻貝です。市場流通こそしないものの海辺の地域では食用として親しまれる貝で、食べた後の蓋を酢に落とすと酢酸で溶けて泡を出しながらクルクルと回るためこの名が付けられました。
サザエのように石灰質で厚手の蓋を持ち、殻口内部は煌びやかな真珠層で覆われます。さらに外唇部はうっすらと橙色で縁取られ、丸く若干の光沢を帯び緑色に輝く蓋と相まって圧巻の美貌を誇ります。一切の希少性を欠く、ごくありふれた小さな貝であるがゆえに見落とされがちですが、20年来私を魅了してやまない魅惑の普通種です。
本種の殻表はカイゴロモという緑藻で覆われていることが多く、この写真では少ししか付着が見られませんが貝殻のシルエットが分からなくなるほどに、阿寒湖のマリモのごとく丸く青々と繁茂している個体も頻繁に目にします(撮影し忘れました、画像検索してみてください)。なんとこのカイゴロモ、スガイの上にしか生えないという特異な生態をしており、夏場は灼熱に曝される潮間帯で暮らす本種にとって耐熱服としての役割を提供しているという研究報告があります。一方で、なぜ付着基質がスガイの殻表でなければならないのかという謎は未だ解明されておらず、長きにわたり研究者たちを悩ませ続ける謎の一つとなっています。
写真の個体は、今月中旬に出張ついでに足を伸ばした神奈川県三浦半島で出会ったものです。久方ぶりに浴びる太平洋の爽やかな潮風と傾き始めた太陽の色は、まだ報じられない梅雨明け宣言を飛び越し真夏の訪れを告げ、海辺で暮らした学生の日々が甦り…。社会人になり大都会で暮らし始めて早4年。初めて訪れた相模湾に、長らく忘れていた夏の美しさを見ました。
2023.7.28 安田 風眞

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