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No. 49 ヒメゴゼンソデ(姫御前袖)

第49回目は、ソデボラ科のヒメゴゼンソデ(姫御前袖)です!
ヒメゴゼンソデは、ベンガル湾-北西インド洋に分布する、殻長130mm前後の中型のソデボラです。
本種最大の魅力は、誰しもが一目で恋に落ちる、その抜群の美貌と言い切って間違いないでしょう。優雅に広がる殻口外唇部はまさしくソデボラの名を体現し、さらにこの下端が強く湾入する様は、たすき掛けの振袖を連想させます。そして水管溝から続く外縁はやや広めのアーチを描き、これらによって形成される流線型のアウターラインの美しさたるや、ただただ見事の一言に尽きます。曲線美という言葉は本種のためにある…。そんなことすら思い浮かんでしまう、ソデボラ科が誇る美麗種です。一方で螺塔は非常に細く鋭く尖り、緻密な縦肋と稲妻模様で飾られます。また白い殻口とは対照的に背面は濃褐色を帯び、艶やかで心地良い光沢を放つ様は実にソデボラらしい特徴の一つで、これを以て本種は"単に美しい"を超越した存在へと昇華します。
 
ちなみに和名に"ヒメ"とつくのは、大型で重厚な「ゴゼンソデ」がいるからです。本種を見るに小さいものを「姫」と呼称する日本の文化に賞賛を送りたく、本種はまさに見つめるほどに惹かれてゆく、魔性の姫君です。
ソデボラ愛好家の私ですが、恥ずかしながら本種を初めてこの目で見たのは3年前の冬のこと。兵庫県は西宮が誇る西宮市貝類館のガラス棚の中で、ひっそりと輝く本種に目を奪われました。最近になってようやく手中に収め満足したのも束の間、次は本種の生きた姿を見てみたい…。己の底なしの欲望に呆れつつ、2023年を締めくくりたいと思います。来たる2024年は貝のおはなしもついに50回を迎える記念の年となります。皆様にとっても、素晴らしい一年が訪れますように。本年も誠にありがとうございました。

2023.12.25 安田 風眞
ソデボラ科の貝を見てみる

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