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No. 66 クリイロエゾボラ(栗色蝦夷法螺)

  

第66回目は、エゾバイ科のクリイロエゾボラ(栗色蝦夷法螺)です!

 クリイロエゾボラは、東北地方以北、千島列島、カムチャッカ半島の水深300-500mの深場に生息する巻貝です。いわゆるツブと呼ばれる貝の一つで、殻長は150mm前後に達します。生時こそフジツボや藻類といった付着物で覆われる殻表ですが、クリーニングを施せばその名の通り美しい栗色が現れ、たちまち輝きを帯びます。ツブの中でも比較的大型で殻が厚くなる本種は、その艶やかな肌と心地よい重量も相まって高級感が漂う佇まい。螺肋と成長線とが交わり細かい網目状に波打つ様は見事の一言に尽き、ひとたび本種を手に取れば、瞬く間に時間が溶けてゆきます。老成個体では殻口外縁が帽子のつばのように板状に広がり、威風堂々たるその出で立ちは見る者を虜にすることでしょう。

 この標本と出会ったのは猟友たちとの春季BBQ大会でのこと。近所の仲良しN氏が持ってきてくれた貝焼きセットの中に、1個体だけただならぬ雰囲気を放つツブが混じっており・・・。しかしここはBBQ会場。やがて焼かれその殻は滅びゆく悲しき運命を背負った本種を前に、喉まで出かかった「焼かないでくれ・・・っ!」という興醒めな発言を必死で飲み込み、網に置かれ軟体部がもがく様を眺めていました。すっかり焼き上がり、N氏が美味そうに食べる姿を横目で見ていると、何やら妙に貝殻の状態が良いではありませんか。なんと炭火で焼いたにも関わらず、奇跡的に殻が無傷で生き残ったのです。ツブの殻を持ち帰る奴なんて見たことがないと爆笑されつつ、私はこの殻と蓋を持ち帰ったのでした。こうして大切な思い出も一緒に閉じ込めた標本は、何やら格別に輝いて見えるのです。

2025.5.29

安田 風眞

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