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第18回 エゾボラ(蝦夷法螺)のおはなし

 第18回は、エゾバイ科のエゾボラ(蝦夷法螺)です!

 エゾボラは北海道以北に分布しています。言わずと知れた海の幸であり、「真ツブ」の水産流通名でご存知の方も多いかもしれません。北の市場へ足を運べば、写真のように穴の開いた本種の貝殻が店先に飾られている光景をしばしば目にすることができます。これは火を通さずに軟体部を抜くための技が行使された跡です。巻貝は殻軸筋という筋肉で貝殻とつながっており、本種はちょうどこの穴の位置からアイスピックのような道具を用いてこれを切断することが出来るのです。ちなみに写真の個体は、北海道は釧路の和商市場でいただいたものです。

 一見すると華がない本種は、これぞまさに北の貝!といった風貌をしています。貝類は一般的に北方種ほど貝殻の色彩・形状ともに地味になり、一方で南方種は派手になる傾向があります。しかし本種はいぶし銀とでも言いましょうか、華やかさなど必要のない魅力に溢れているような気がして止みません。殻表を飾る波打つドレスのような肋やオレンジ色に輝く艶やかな殻口に指を這わせれば、荒々しい北の海を生きたエゾボラの貝生に想いを馳せ、青年の日に夢を描いた海を思い出しつい目を細めてしまいます。

クセがなく甘みの強い本種の軟体部は、ここ数年でようやく貝嫌いを少しずつ克服しつつある私にとっても食べやすく、驚かされた種の一つです。最近では、二枚貝綱は過熱したものであれば心から美味しいと感じるようになってきましたが、腹足綱は未だ強敵です。殻も軟体部も遍く愛せる男を目指し、日々奮闘中です。

安田 風眞

第17回 ウシノツノガイ(牛の角貝)のおはなし

17回目は、今年の干支にちなみタケノコガイ科のウシノツノガイ(牛の角貝)です! 

ウシノツノガイは紀伊半島以南、熱帯インド-西太平洋に分布しています。貝殻はタケノコガイ科の名に恥じぬ、まさしくササのタケノコにそっくりな形状をしています。しかし、あくまで私見ですが、名前の由来を「なるほど!確かに!」と納得できる貝が多いなかで、本種はどうも牛の角との相関が見つけられません…。今後明らかになりましたら改めて報告します。

そんなことはさておき、本種の貝殻は個体差こそありますが、特に美しい個体ではいつまでも撫でていたくなるほどに、螺塔先端付近までおとなしく品のある光沢を放ちます。そして滑らかな淡黄色の地に濃褐色の斑点が規則正しく並び、シンプルな貝殻の形状に素晴らしいアクセントを与えます。 また殻口外唇はカミソリのように薄く鋭くなることがあり、取り扱いの際には注意が必要です。

 タケノコガイの探し方はコツを掴むととても簡単です。日中は砂に潜っており姿を見ることは難しいのですが、彼らが夜間に活動していた足跡、砂地の上に引かれた砂紋(波の跡)とは明らかに異なるラインが海底の砂の上にくっきりと残ります。これを辿っていき、足跡が途絶えたところを掘るとタケノコガイが出てきます。そして海のタケノコ堀り最大の魅力は、掘り起こすまで何が出るか分からないという点でしょう。本科最大種であるリュウキュウタケが、舞い上がる砂煙の中からその重厚な姿を現した時の情景は今でも昨日の出来事のように思い出すことが出来ます。

安田 風眞

第16回 ヒオウギガイ(檜扇貝)のおはなし

新年あけましておめでとうございます。20211発目の第16回目は、イタヤガイ科のヒオウギ(檜扇)です!

 ヒオウギは房総半島~沖縄の岩礁域に分布しています。貝殻は黄色やオレンジ、赤、紫など多様かつ自然で生まれたものとは信じがたい極彩色で彩られ、初見では人工的に着色されていると疑ってしまうほどです。ちなみに、ヒオウギがこんなにも鮮やかな彩りの殻を持っている理由はまだ明らかになっていません。海中では足糸という繊維で岩に張り付いておりホタテのように泳ぎまわることはないようです。

 また本種は水産重要種であり、瀬戸内海沿岸域を中心に養殖されています。見た目のみならず味もホタテにそっくりで、ホタテよりも味が濃くおいしいという人もいるほどです。出荷前には殻表の付着物を除去するため、グラインダーで一つ一つ手作業で磨かれることが多く、生産者のヒオウギへの愛を感じることが出来ます。また、貝殻の色は遺伝することが分かっており、養殖個体は代々発色の良い個体同士をかけ合わせているため野生の個体よりもより鮮やかになる傾向が強いそうです。

研磨と言えば、ヒオウギの殻表には放射肋が走り、その上にびっしりと鱗状の突起(鱗片)が並びます。この鱗片を破損しないようにピンセットと柄付き針で鱗片を一つずつ慎重にクリーニングすると、ため息が漏れるほど美しい標本が出来上がります。しかしその果てしない手間たるや思い出すだけで顔を覆いたくなるのですが、不思議なものでしばらく時間が経つとまたやりたくなってくる、癖になる快感と達成感があります(そしてまた後悔します)。

16回目にして、ついに二枚貝の登場となりました。今後も巻貝を中心に執筆していく予定ですが、二枚貝の魅力も紹介できるようまずは私が二枚貝について勉強していきたいと思います!2021年も引き続きよろしくお願いいたします。

安田 風眞

ヒオウギガイの商品ページ

第15回 イチョウガイ(銀杏貝)のおはなし

 第15回は、アッキガイ科のイチョウガイ(銀杏貝)です!

 イチョウガイは紀伊半島以南、熱帯インド-西太平洋、ハワイ諸島の岩礁域に分布しています。本種の細身でスラリと伸びた純白の貝殻は、文字通りイチョウの葉によく似た突起で飾られています。一方で、殻の上に発達した突起とは対照的に肩は意外なほど丸みを帯びており、一見するとアンバランスで違和感を覚えてしまうデザインです。しかし、手に取って眺めるたびにひとりでに溜め息が漏れてしまう、そんな魅力が詰まった貝殻です。

また殻長5060mm程度という絶妙なサイズ感は、本種の美しさをより繊細かつ緻密な印象へと高める重要な要素であるように感じます。イチョウガイを美貝たらしめるのは、まさにこの大きすぎず小さすぎずといったサイズにこそ秘められている、そんな気がして止まないのです。

余談ですが、本種の仲間にトナカイイチョウという種がいます。トナカイイチョウの突起はより細長く発達するため、この名がつけられたのでしょう。今夜はクリスマスイブ。標本箱のトナカイイチョウはサンタを連れてきてくれるでしょうか?いくつになっても、クリスマスイブの夜は何やら心が弾んでしまいます。

早いもので2020年も残すところあとわずかになりました。今年は、あえて私がここに言葉を記すまでもなく、まさに激動の1年間でしたね。しかし、明けない夜はありません。来年こそは貝探訪へと気軽に出かけられる年になることを信じます。それでは皆様、今年もありがとうございました。良いお年を、そして良き貝ライフを!

安田 風眞

第14回 ハツユキダカラ(初雪宝)のおはなし

14回目は、タカラガイ科のハツユキダカラ(初雪宝)です!

ハツユキダカラは房総半島・能登半島からオーストラリア北部に分布しています。本種は生息する深度によって殻の色味が異なり、浅場の個体は青みを、深場の個体は黄色みを帯びる傾向があるようです。命名者は褐色を背景に白点を散らした本種の色彩に、冬枯れに降る初雪を見たのでしょうか。殻はぷっくりとほどよく丸く膨らみ、その名の通り雪模様が非常に可愛らしい中型のタカラガイです。また、前述の通り殻の色彩には個体差が目立つため、お気に入りの個体との出会いを探すのが非常に楽しい種の一つであるように思います。

 私は秋田県でこの貝を拾ったことがあります。このように分布圏外で貝を見つけた時に考えるべきことは①誰かが外部から持ち込んだ貝を捨てた、②死滅回遊してきた幼生が着底・成長し力尽きた、この2つです。生まれたばかりの貝の赤ちゃんの大多数は浮遊幼生というプランクトンとして、海流に乗って旅に出ます。浮遊期間は種によって異なりますが、長いものでは数か月に及びます。そして適切な環境に到達した幼生は着底し、我々のなじみのある貝の姿へと変態します。この時、誤って分布圏外に出てしまい、そのまま着底してしまう個体が一定数存在します。そしてこれらのほとんどは季節的な海水温の変化とともにやがて死滅してゆく運命を背負っています。これが死滅回遊です。ハツユキダカラは比較的冷たい海水に対する抵抗力が強く北方での採集事例が多い種のため、私の標本はおそらく後者であると推測されます。

故郷を知らずに遥か秋田の海に迷い込んでしまったハツユキダカラの標本を手に取ると、つい慣れない都会で暮らす自分を重ねてしまいます。私はまだまだ旅の途中の“浮遊幼生”でありたい、ようやく冷たくなってきた風を頬に感じながら、そんなことばかりが頭に浮かんでしまうのです。

安田 風眞

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第13回 ウミウサギ(海兎)のおはなし

13回目は、タカラガイ上科ウミウサギガイ科のウミウサギ(海兎)です!

ウミウサギは紀伊半島以南、熱帯インド-西太平洋域に分布し、ソフトコーラルを捕食しています。海兎というかわいらしいネーミングのとおりウサギのように白く丸い形状をしていますが、海外ではこの見た目が鶏の卵のようであることからEgg cowrie shell(卵のタカラガイ)とよばれています。

本種はこれまで紹介してきたタカラガイとは異なり、一見するとこれといって華がないような印象を受けてしまいます。しかし、この一切の飾りがない純白にこそ本種の魅力が秘められているように感じます。陶磁器のような艶やかな白は、角のない殻の優しい丸さを際立たせ、つい手に取りたくなる衝動を駆り立てます。

一方で殻口内部は濃褐色で彩られています。雪国育ちの私は、このコントラストに冬枯れの大地を隠した白銀の世界を重ねてしまいます。 標本箱の「雪兎」は、晩秋の夜風と相まって私をセンチメンタルな気分にさせてやまないのです。

貝のおはなしは、今回でちょうど1周年を迎えました。連載当初は修士論文執筆の山場に突入し始めた頃で、息抜きにコレクションを眺めては貝への想いを綴っていたことをよく覚えています。これからも皆さんに楽しんでいただけるよう精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

安田 風眞

 

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第12回 ヤコウガイの蓋のおはなし

第10回目では想いの丈をこめたヤコウガイへの恋文をしたためましたが、実は文字数の関係で語り切れなかった魅力がありました。今回は隠れた魅力、ヤコウガイの蓋について語ってみようと思います。

その前に貝の蓋について少々説明します。サザエのつぼ焼きでご存知のように、腹足類(巻貝)は蓋を持っています。なかにはアワビ(実は巻貝!アワビのお話はまた今度)のように進化の過程で蓋を捨てたものもありますが、そんな蓋のない巻貝でも幼生の時にはしっかりと蓋を持っています。 また、サザエのように硬い石灰質の蓋のものと、アカニシやエゾボラのようなぺらぺらとした革質の蓋の二種類がありますが、石灰質の高級な蓋は少数派でほとんどの種は革質の蓋を持っています。

そろそろヤコウガイの蓋に話を戻しましょう。本種の蓋の外側はサザエのような刺々ではなく饅頭のようにつるりと丸く、肌触り、サイズ感ともにまさに絶妙。それに加えずっしりとした重みがあり、手に取るとなんとも言えない所有欲を満たしてくれます。内側に浮かぶ螺旋模様も非常にチャーミングです。

そんな愛すべきヤコウガイの蓋ですが、初めてこれを見た大学の研究室の後輩諸君の反応が面白かったので、沖縄土産に配ったことがあります。そこでまんまと私の張った“罠”にかかった数名は、私が研究室を去った現在も意欲的に貝殻を集めているようで、時折素晴らしい貝殻を手に入れては自慢の連絡をくれます(とても嬉しい)。ちなみに私は会社のデスクでペーパーウェイトとしてこの蓋を愛用しており、時折これを撫でては遥か南国の海に想いを馳せ、日々の業務にいそしんでおります。

安田 風眞

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第11回 アラフラオオニシのおはなし

11回目は、テングニシ科のアラフラオオニシです!

 アラフラオオニシはその名の通り、オーストラリア北方に位置するアラフラ海に生息しています。そして本種は世界最大と名高き巻貝であり、大きいものでは殻高80 cmに達し、多毛類(ゴカイの仲間)を食べながら暮らしています。テングニシ科だけあってやはり軟体部は美味なようで、ホラガイやヤコウガイ等と同様に身は食用として、そして貝殻は観賞用や様々な加工品の材料として余すところなく愛される貝です。ちなみに英名はAustralian Trumpet(オーストラリアのトランペット)です。

 本種の鑑賞ポイントは、殻頂から体層にかけての見事としか言いようのない膨らみと、バランスよく細長く引き締まった水管溝のコントラスト。そして肩の結節が成長につれて徐々に密になり、やがて途切れることのない滑らかで直線的なエッジを形成する様に、思わず指を這わせてしまいます。

しかし何よりも、やはり「世界一」という甘美な響きに得も言われぬ憧れを感じてしまうのが人の性というもの。巻貝の王様を傍らに、ロマンを浮かべたワイングラスを傾ける。そんなちょっとした贅沢で日々の暮らしに花を添えてみるのはいかがでしょうか。

ちなみに世界最大の二枚貝は言わずと知れたオオジャコ。なんと驚くべきことに、貝殻の問屋さんにはオオジャコの商品在庫もあるんだとか。すごいお店です…!

安田 風眞

 

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第10回 ヤコウガイ(夜光貝)のおはなし

記念すべき第10回目は、サザエ科のヤコウガイ(夜光貝)です!

本種は種子島・屋久島以南に分布していて、読んで字のごとく夜に光りそうな貝ですが、決して自ら光ることはありません。屋久島でよく採れたことから「屋久貝」と呼ばれ、そこから転じて「ヤコウガイ」になったと言われています。また本種の貝殻は螺鈿細工の原料になるため、光り輝く螺鈿のイメージから夜光貝という漢字があてられたのかもしれません。

軟体部は美味であり、古くから漁獲され身は食用、殻は様々な加工品の原料やお土産物として余すところなく愛されてきた南国の大型種です。

この手の大型種の殻表はしばしば石灰藻やゴカイの棲管等でビッシリと覆い尽くされ、海底に転がる礫のようで魅力に欠ける印象を受けます。ところがこれらをワイヤーブラシで地道に除去すると、濃淡混じる暗緑色をベースに白や褐色のスポットが浮かぶ深みのある色彩で彩られた地肌が現れます。そしてヤコウガイの本来の美しさに途端に心を奪われ、骨の折れるクリーニング作業の苦労など全て吹き飛んでしまいます。学生の頃は研究室の後輩たちにせがまれ、いくつものヤコウガイのクリーニングをしたものです。

都会の澱んだ海を眺めながら、ヤコウガイが暮らすどこまでも青く透き通った遥か南の海へと、募る想いに焦がれる幾多もの夜を数え… 1日も早いコロナ禍の収束を願うばかりです。

安田 風眞

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第9回 ホネガイ(骨貝)のおはなし

9回は、ホネガイ(骨貝)です!

ホネガイは、読んで字のごとく骨貝です。魚の骨格標本を思わせる魅惑のこの貝は、房総半島以南~オーストラリアまでの砂地の海底に生息しています。英名はヴィーナスコーム、つまりヴィーナスの櫛です。本種を「骨」と捉えた東洋と「女神の櫛」と捉えた西洋。文化の違いという観点から貝を観察してみるのも面白いですね。

ホネガイをはじめ貝類の発達した棘には①捕食者からの防御 ②海底での殻の向きの安定化、この2つの役割があると考えられています。とはいえ、これらの機能を果たすためだけにはあまりにも美しすぎるドレスで着飾った本種の佇まいには、ただただ溜め息が漏れるばかりです。ところがこのドレス、本人(?)には少し厄介な代物です。殻口から殻を伸ばして螺旋状に成長していく巻貝にとって、目の上のタンコブならぬ眼前の棘はやがて障害物になります。その為、本種は成長過程で邪魔になる棘の根元を自ら溶かしてこれを切り落とし、殻を大きくしていくのです。

ホネガイには極めて個人的な思い出があります。私が小学生の頃、兄が修学旅行のお土産でこの貝を買ってきてくれました。祖父の家のガラス棚の高嶺の花だったこの貝が自分の標本箱にも収まっている嬉しさで、毎日取り出して眺めては大切にしまい込んだものです。

綺麗なバラ、おっと貝には棘があります。本種の棘は非常に鋭く、そして意外にも頑丈です。鑑賞の際には、どうか思わぬケガにお気をつけ下さい。

安田 風眞

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