No. 71 イトマキボラ科のマルニシ(丸螺)

第71回目は、イトマキボラ科のマルニシ(丸螺)です!
マルニシは、奄美大島以南の潮間帯の岩礁域に分布する殻長40mmほどの巻貝です。
本種の殻表には微かな凹凸を伴う非常に密で均整の取れた螺肋が走り、そのうえで鈍い光沢まで伴うというなんとも贅沢な仕上がり。この模様ゆえに、まるで螺塔や体層の境目が溶けてしまったかのような視覚的効果が生まれ、元々のなで肩に拍車をかけ大変にずんぐりむっくりとした可愛らしい輪郭を描きます。さらに殻は非常に重厚かつ堅牢で、小ぶりながらも手に取ると充実の質量を感じ、高い満足感で満たされることでしょう。落ち着きのある褐色系でありながらも決して飽きさせない絶妙な配色も相まって、思わず手に取り見入ってしまう魅力に溢れた貝です。その一方で殻口だけは真っ白で陶磁器のような艶やかさを帯び、殻表とのコントラストが実に美しく、さらにこの純白を縁取る外唇には螺肋が黒く透かしとなり現れることで、見事としか言いようのない完璧な調和を奏でるのです。
この貝もまた、学生の頃に沖縄県で採集した標本の一つです。採集時は厚い石灰藻に覆われておりほとんど殻表は見えない状態で、まぁ初めてだしな・・・程度の感覚でとりあえず持ち帰ったことを記憶しています。ところが帰宅しクリーニングしてびっくり!こんなにも美しい貝に化けるとは。何事も第一印象で決めつけてはいかんなぁと、そんな教訓が聞こえてくるような気がしてなりません。
2025.10.30
安田
風眞



































